noteに直撃!
企業がnoteで発信するメリットってなんですか?

noteに直撃!企業がnoteで発信するメリットってなんですか?

380万人の会員数を誇る話題のメディアプラットフォーム『note』。おそらく個人の発信の場として既に活用されている方も多いのではないでしょうか。昨今では企業アカウント数も3000件を越え、そのメディア運営に編集者が関わるケースもあるそうです。そこで今回は、編集者が企業のnote運営に参加する際に知っておいてほしいことやポイントを、note proチームの佐々木望さんと高橋なつきさんに根掘り葉掘り伺ってきました。

まずは知っておきたい
noteの特長とは

2014年に開設され、誰でも楽しくメディア運営できる気軽さが支持されてきたnote。昨今の巣ごもり需要の影響もあって、この一年だけで会員数は1.8倍、総記事数は約2倍に増えるなど、ますます成長が加速しています。そんなnoteの世界観には、次のような特長があります。

・ランキングや広告がないので自分の伝えたいことに集中できる
・クリエイター同士の出会いを生む仕組みがある
・創作が続けられるよう、いろいろな機能がある

実際に自分の手で動かしてみると、テキスト、画像、つぶやき、音声、映像がサクサクと投稿できる軽さを実感。記事の左右に広告がないすっきりとしたレイアウトは、書き手も読み手も記事に集中できる設計です。フォロワーがたくさんいない段階でも、読者が自分の記事を気に入ったら気軽に「スキ」を付けてもらえたり、継続することで「バッジ」や「ポップアップ」で褒めてもらえるというモチベーションアップの仕組みも魅力。「今日の注目記事」欄には、note編集部が人力で選ぶ話題の記事が上がってくるので読んでいても楽しい。また、多数の出版社やメディアとパートナーシップを結んでいて、幅広いジャンルの映画や書籍がnoteの連載から生まれています。

そして、2019年には法人向け情報発信プラットフォームとして利用法人に有料で提供している『note pro』が誕生。法人が情報発信を簡単に続けられるよう、多彩な機能とnote側からのサポートを特徴としています。

企業がnoteで
メディアを運営する意義

── それではnoteの佐々木さんと高橋さんにお話を伺います。いわゆる企業広報の発信ツールというと、自社ホームページでのオウンドメディア運営やSNSの活用などが考えられますが、noteを運営される側から見て、企業がnoteでメディア運営するメリットはどんなところにあると思いますか。

佐々木さん(以下、敬称略)「前々から言われていることではありますが、ネットで個人が情報発信するようになって情報の数が増え、グローバル競争の中で競合となる企業の数も増え、多くの企業は新しい形の情報発信を考える必要が出てきました。でも、企業のオウンドメディアは外部の制作会社に委託して運営されているケースが多く、自社のスタッフだけでメディアを立ち上げるとなるとものすごくハードルが高いですよね。

それに対して、noteはゼロからサイトを構築する必要がないのではじめやすく、多くのクリエイター・読者が集まっているので情報も届きやすいです。また、長文を投稿できるので文脈が共有されやすく、荒れづらいというのも法人の方々にとっては大きいのではないでしょうか」

── 昨今では企業の“炎上”が後を絶ちませんが、その「荒れづらい」というのは、どんなところに秘訣があるのでしょう。

佐々木「まずは、ランキングや広告がないこと。ランキング上位を狙ったりPVを稼いだりする必要がないので、悪口や過激なことを言ってもインセンティブが働かない場となっています。また、記事にはじめてコメントを投稿するときには、ひと呼吸いれる確認画面が出るようになっています。感情的なコメントに自ら気づくきっかけとなり、未然に防ぐことができればという施策です。結果として荒れづらい場となっていて、法人も等身大の人格が出しやすい環境ができていると思います」

── noteの“やさしい文化”がそういう環境を作っているんですね。それでは企業のnoteに対する読み手側のニーズに特徴はありますか?

佐々木「例えばファンが多い企業であれば、あまり知られていないマニアックな情報が喜ばれたりします。ほかには、その企業だからこそ語れることを世の中に役立つような形に変換して伝えたりすると、もともとファンではない方々にも届くことがありますね。あとは、しっかり感情が出ている記事だと、そのジャンルに興味がない方にも物語のような気分で読んでもらえたりします」

佐々木 望(ささきのぞむ)■2005年、慶應義塾大学経済学部卒。大手旅行会社で法人営業として勤務後、2006年にオールアバウトに入社。広告営業、マーケティング、商品企画を経験する。2019年12月より現職。note proチームのリーダーとして、法人向けサービスの拡充を担っている。

佐々木 望(ささきのぞむ)■2005年、慶應義塾大学経済学部卒。大手旅行会社で法人営業として勤務後、2006年にオールアバウトに入社。広告営業、マーケティング、商品企画を経験する。2019年12月より現職。note proチームのリーダーとして、法人向けサービスの拡充を担っている。

高橋さん(以下、敬称略)「個人も法人も共通して言えるのは、書き手に『書く必然性があるか』ということだと思います。noteの読者は、しっかりした情報を摂取しようという方が多いので、第一人称が会社か個人かにかかわらず語りたいという熱量があれば、ラフな語り口調でもニッチな内容でも読まれる傾向にあります」

佐々木「確かに。企業には必ず何かしらの熱量があると思いますが、それを広めようというやり方をしているところが、人気のあるnoteの特徴と言えますね」

── 企業はそれぞれ目的を持ってメディア運営を始められると思うのですが、noteでの発信が予想外の反響につながるケースもあるのでしょうか。

佐々木「そうですね。企業がnoteを始める目的は大きく、プロモーション、採用、企業ブランディング、課金メディアの運営の4つに分かれますが、ひとつの目的で発信していたら、他の面にもいい影響が生まれたというケースはたくさんありますね。例えば、ある専門系の出版社の場合、もともとは新刊のPRのためにnoteを活用されていたのが、理念に共感し一緒に働いてくれるインターンを募集する記事を出したら、そこから内定に至ったり。その時は募集ページだけではなくて他の記事を見て、会社をよく理解した上で面接に来てくれたことが良い採用に役立ったと伺っています」

高橋「あと、多くの企業で共通しているのはインナーブランディングに役立ったという点ですね。例えば、note運営担当者が、採用目的で社員インタビュー記事を作った際、「あの人はこういう仕事をしているのか」と社内でも話題になり、他部署から取材のリクエストがくることもあるそうです。また、インタビューを受けた社員にとって、自分の仕事の棚卸しの機会になったり、改めて自社や事業への想いが強くなった、という話はよく聞きます」

── noteでのメディア運営に親和性が高い企業の特徴があれば教えてください。

佐々木「どの企業にも親和性があると思います。たとえば、一見デジタルとは縁がないような老舗企業さんも。長い歴史の中で生まれたいいお話が多く、実際にそうした企業がリブランディングを目的に使っていただくケースが増えています」

── 法人向けのサービスでは、2019年に有料プランの『note pro』をローンチされました。

佐々木「無料のnoteが順調に成長する中で、法人で使っていただいていたユーザーの方々から自社のロゴを使いたいとか、テーマカラーを変えたいとか、もっと配置を自由にしたいというようなカスタマイズの要望をいただくようになりました。法人の方々に活用していただくというのは、立ち上げ当時からもともとあった構想で、そこに法人ユーザーの方々の声をのせて『note pro』を企画しました。こちらも無料noteの会員数と同じく順調に契約数は増えています」

── noteは 「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションにしていますが、note proではそうした面へのサポートもしているのでしょうか。

佐々木「いろいろなサポートを用意していますが、その中でも高橋の担当であるカスタマーサクセス部門でメディアコンセプトや導線の作り方など、基本的なオウンドメディアの作り方を解りやすく翻訳した形でご案内しているところは大きいです。コンサルティングとまではいきませんが、補助輪のような形で必要なことを凝縮してお伝えしています。また、オウンドメディアで発信して、最終的には読者とのコミュニティを作るのを目標に、note内の先進的な実例を示しながら、そういった部分のサポートも行っています」

編集者が企業noteに関わる際の心構え

── 企業のnoteが増える中、お二人から見て、そこに編集者が介在できる可能性は大きくなっていると感じますか。

佐々木「大きくなっているように思います。実際にnote proで契約されている企業の中にも、大手の食品メーカーさんや文具メーカーさんのnoteで、プロの編集者やライターの方が活躍されています」

── お二人の視点から見て、企業の運営するnoteの中で外部の編集者が果たせる役割はどんなところだと思いますか。

佐々木「noteを運営される上で企業が抱えるお悩みの多くが、続かない、書けない、書くネタがないという点です。一方で、自社の持っている強みや魅力的なストーリーを企業自身が見つけ出すのはなかなか難易度の高い課題でもあります。なぜなら、他から見たら唯一無二のすごい仕事も、本人たちにとっては当たり前になっているから。そこをきちんと言語化して、伝えることの要点を絞ったり、台割りを作ったりと指揮できる方が第三者にいると非常に心強いですね」

── 高橋さんはカスタマーサクセス担当として数々の企業のメディア運営に直接関わられていると思います。編集者が企業のnoteに関わる上で、心得ておきたいポイントはどんなところでしょうか。

高橋「内部にコミットできる編集者であるか、その会社の理念や事業に、編集者自身が共感を持って取り組んでいるかという点はすごく大きいと思います。あとは、アカウント全体のコンセプトや、個々の記事の目的やターゲットを理解して書けているかということですね。

編集プロダクションの方とお話しする時に「定量的な結果を求められているのですが、どうすればいいですか?」と相談いただくことがありますが、定量的な結果って、そもそものターゲット設定や、読者にどうなってほしいか、その会社のどんな魅力を伝えたいのか、というコンセプト設計がありきですよね。そのような情報を土台としてディスカッションさせていただけると、素敵なメディアに成長する気がします」

佐々木「関わるならば、記事を書くだけではなくてメディア全体のコンセプトメイキングまで関わってほしいですね。記事を書くというのはあくまでも手段に過ぎないので、全体に関わってもらうことで効果が出るはず」

高橋「読み応えのある記事を求めている人が多いというのがnoteの特性。他のSNSでは伝えきれない、熱く重厚感あるストーリーを表現できる場所です。普段の会話では自分の熱い語りをずっと聞いてもらえることって、そんなに多くないじゃないですか。でもnoteなら読者がじっくり読んでくれる。そんなイメージでnoteを書いていただくと、愛しつづけてもらえるメディアになるかもしれませんね」

高橋なつき(たかはしなつき)■凸版印刷で出版社向けの営業や企画職を経験後、2019年9月にnote社へ入社。note proのセールスを経て現職。

高橋なつき(たかはしなつき)■凸版印刷で出版社向けの営業や企画職を経験後、2019年9月にnote社へ入社。note proのセールスを経て、現在はカスタマーサクセスを担当。

佐々木「そうですね。やはり“等身大感”は大切ですね。感情移入しながら語れる環境だと思います」

参考にしたい企業noteの実例

── 編集者の参考になるような、お二人が「ぜひ覗いてみて欲しい」と思う企業noteの事例を教えてください。

佐々木「まず初めに紹介したいのはSmartHRさんです。こちらは『オープン社内報』という取り組みを行っています。プロダクトデザインの業務面の話から社内制度の改善のような福利厚生の話まで社内の情報をオープンに公開されていて、これを読むだけで良い会社だということが伝わってきます。採用にも効果が表れているそうです」

高橋「パナソニックさんが展開されている『ソウゾウノート』もおすすめしたいです。パナソニック自体はみんな知っている会社ですが、実際、自社の技術を基礎としながら、お客様の声をしっかり汲み取っている「共創」が強みの会社であることはなかなか浸透していない、という課題感を持っていらっしゃいました。そこで、「共創」というスタンスを体現するコンテストを実施したり、社員の想いをnoteで発信することで、自社ブランディングを行っています」

佐々木「もう一社は『一般書通信』と『こどもの本編集部』の2つのnoteを運営しているポプラ社さんです。一般書通信ではサークルという月額会費制のコミュニティ運営ができる機能で、編集者とポプラ社ファンの人たちが意見交換できる場をつくっています」

── 参考になるお話をたくさんいただき、ありがとうございました。最後にお二人がnoteを運営する上で編集者にリクエストしたいことがあれば教えてください。

佐々木「やはり、まずはご自身でnoteを始めていただきたいです。あとは、自分で書かなくてもnoteで好きな企業のアカウントや自分好みの発信をしている企業を見つけることができるので、それをお仕事の参考にしていただけると嬉しいです」

撮影/伊東祐輔

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